・自分用メモ・使いどころの見えない保留断片文章とか
・前提もなくマイワールドそして羞恥プレイ
・気が向いたら何かで使うかもしれない


木曽軍
  ├ 兼光
  ├ 
  ├ 兼平と義仲
  └ その他
清水物語





























兼光

冬だったからかな。思ったより傷んでるふうも無くて綺麗なもんだったけど。
小さい頃からずっと一緒だったのに、首だけになった皆はすっかり他人行儀でね、 見慣れた顔をしてるのが不思議なくらいだったよ。

置物みたいに置かれた殿の首が、びっくりするくらい美しいのに気付いて思わずゾッとしたんだ。
物に精製されて際立ってそう見えたんだね。 あぁこんなに美しい人だったんだと、私は今迄沢山首を見てきたけど、こんな首は見た事が無かった。 いつもはただ切り取られた誰かの一部でしかなかったのに、 殿の首はそれ自体が完成品であるみたいに置かれていたんだ。

樋口被斬




「そう駒王、お前は笑っていなさい。お前の天真爛漫な明るさがこの山の奥を照らすんだ」

笑わなかったら、貴方は美しい人形に見えてしまう。
人形は遊ばれて壊されても成すがまま何も出来やしない。お前は違うはずでしょう?
だから貴方は泣いたり笑ったりくるくる表情を絶やさないのでしょう。
それとも人形に見えぬようにと必死なのだろうか。見世物劇の人形がくるくるとよく動き回るように。

駒王丸=義仲様




お前は本当に、よく鍛えた美しい体躯をしているね。美しい肉体に素朴な精神。 素朴と言えば聞こえはいいけれど、ようするに単調で浅はかなんだ。 だからこそ肉の器を腐らせることなく、全ての精神が器をみがくことに終始できる。 それでいいんだよ、お前。 どうせ大したものも持てやしないのに、徒に中身なんてあっても祿なもんじゃないよ
あの人もそういう方だと思っていたけれど少々違ったね。とても美しくて複雑だ。 男であって女でもあったから、それでいて温かく艶かしい肉体を持っていたから、 そう簡単にはいかないのだろうね。

兼光→兼平+α(義仲様)どう見ても三島






分かっております。貴方は私の後生を思ってくださった。ああでも仰ってくださらなければ確かに、 私何処までもお供するつもりでしたから。あの時私に致しましたこと、仰った全て、 薄情だなんてこれっぽっちも疑ってはおりません。 最後の最後まで、貴方がどれほど私を気にかけてくださったか、身に有り余る程承知しております。 ですが、私は情けなど欲しくなかった!私が本当に欲しかったものは、 全部兄上が持っていってしまった!
分かっておりますとも、どれもこれも貴方には罪の無いことでございます。私の罪はそこにあるのです。 傲慢で身の程知らずの欲深い女、私一人がこの身を業火に焼いて悶え狂っているだけなのですから。 あなたには関係の無いこと。私なぞお構いなさらずに!さあ、お行きあそばせ!お行きあそばせ!

そもそも私はちぐはぐだらけでした。 どうして弓取りとして生きようとしながら、女の身を捨てなかったのでしょう。 ただの女では貴方を守れはしないと、弓を取ったのは私自身だったはずですのに。

貴方を守る為戦おうと言いながら、女でいることを止めなかった、だから最期に因果が巡った。 都合のよい身に甘えたばちがまわったのです。男になりましょう!
黒髪をためらいなくバッサリ切落とす。足元にうねって散る髪
なんなら乳房も切落としてしまいましょうか。随分さっぱりした心地でしょうね。
びっくりする兄
何てことをしたんだ。綺麗な黒髪だったのに
女の証も力も要らぬのです。魂だって必要ありませんわ。或いは物具に或いは弓にでも構わない。 最期を共に戦えるなら!

兄上=兼平。兼光兄さんはじろ兄「様」




空が己だけを覆うように見えるあの一瞬、最も官能に近しい頂点に、 共に思い合いながら死んでいけるなんてまぁなんて甘美なんでしょう。
でも私は指をくわえて見ただけ。 お話やお芝居の最中に「こちら側」で見ている自分に気がついた時の狂おしい憧憬、さっぱりした諦念。

結局私は現実に留まりました。
現実はとても厳しいのですわ。逃げ延びたり、生き延びてみたり、 お命じになった言伝や後始末、今の己の面倒ごとやこれからのことについて、 空の心と裏腹にやるべきことは山とございました。そしてそれだけで十分充実していたのです。 あれだけ沢山失ってしまったというのに、変わりなく楽しみも喜びもする、 無味乾燥な無常さで現実は満たされていました。
その空っ風に吹かれて私の涙は乾き、私の心は干乾びました。 …そう思うと、それまでこの私も乙女のような脆い感傷を持ち合わせていたのですわね。 ですが、そうして乾いてみると随分さっぱりしていて、 地に浸みて消えた涙は穀物や果実を実らせました。
そこに観念などなかったのです。そんなふうに成り行きで与えられる雑務を、 片付けてゆく以外で人間が生きて死ぬ方法はなかったのです。
現実の雑務を人に預けたまま、あなたは誰もが羨む美しい陶酔に沈んでいってしまいました。 私だってできることならその内に沈みたかった。陶酔の供になりたかった。 皆が無くなった後は流石の私もこたえたのですから。
それにあの悲しさと虚しさがせりあがる喉に、 構わず肉体が望む食事を押し込もうとする息苦しさと矛盾、 失笑された精神はふて腐れて今でも時折終末の甘い夢を見させます。 いえ、こんな馬鹿みたいに大仰に言う必要などありませんでしたわね。 素直に申せば、今だってずっとあなたが恋しくもあり、恨めしくもあるのです。
それでも私は陶酔の沼の縁に立って、埃っぽい土の上で、からりとした陽光を浴びているんです。 からからに水を枯らす無情な太陽が暴いたこの燦々たる世界で、存外晴れ晴れした心地なのですわ。

木曽の最後のその後




もし世界が滅んで、兄上と私だけになってしまったら、きっとあなたの子を産むでしょうね。 もちろん生まれてくるのは皆おかしな化け物ばかり。私達兄妹の子ですもの。 人間になり損ねた化け物が、人間の変わりに増えてゆくんです。

巴→兼平。親近相k




貴方は知っておられない
貴方以外の全てが枯れた花壇のように
ぱさぱさ乾いて散らばっている
錆び付いて濁った色
水に溶けた金属の生臭さはお分かりでしょう
そんな廃れた風景の中に
貴方だけ立ってらっしゃるの
それは美しい大輪の花
涼やかな水気に湿されて色付く花弁
朗らかに陽光を受け止める広い蕊
艶やかに翻る葉と逞しく命の張り詰めた茎
唯一の色であり
喉を湿す水分であり
文字通り花そのものなのです
砂っぽい地面と乾いた空気の中で
いつ我が身が枯れ果てるかと恐れながら
堂々と咲き誇ってらっしゃる美しい花なのです
最後の豊饒を求めて
あなたにたどり着いた干乾びかけの羽虫達に
あなたはその眩い美しさと満々と湛えた黄金の蜜で
唯一で最後の生の酩酊を
お与えになるのです

(でも見渡す限り干乾びきっておりますもの、か弱い貴方はきっと長く耐えられないでしょう)
(それに、しばしば美しい花は手折られてしまうもの)

せめて手折られなどさせるものですか

巴→義仲様。花は向日葵




「酷いや、姉上。僕が死んでもいいって言うんだね?」
「だって貴方は仮面の弟ですもの。今喋ってくれる貴方が死んだとしても、 何食わぬ顔で中身を挿げ替えて現れることができるのですから」
「そうかな?「弟」の僕が死んだら、いくら中身を取り替えても、 顔に被るべき弟が死んでるんだもの、現れっこないじゃない。」

ごろたんと巴さん。姉弟じゃない説を聞いて




「何て残酷なことをなさるのでしょうね。恋に狂った人をこんな風にからかって」
「そう思うか?なかなか女らしいことも言うじゃないか」
「私を馬鹿にしておいでなのですね」
「気に触ったのか?だったら悪かった。別に馬鹿にして言った訳じゃないんだ」
「そうではございませんわ。貴方は分かってらっしゃらないのね。酷い方」
巴、出て行く

長い時が経つ
どこか暗闇にでも浮かんでいるような暗い舞台で舞う巴
遠い橋掛を渡って舞台へ来る義仲

「まるで無言劇だな」
「私の鼓は綾の鼓なのです」
「お前が残酷だって言ってた意味が、今になってやっと分かった気がする」
「ならば私はこれからも、鳴らない鼓を打ち続けなければならないのですね。やはり貴方は酷い方」
「俺だって、鳴らぬのを知って打たなきゃならないんだ。許してくれ。」
「いいえ、貴方はきっと鳴らしてみせるでしょう。 許してくれだなんて私の前で、ぬけぬけと仰るのですね、ああ憎たらしい」

(兼平←)義仲←巴。近代能楽集「綾の鼓」見ての会話




兼平と義仲

ご自分ではご存じないでしょう。
あなたの其の美しい目、豪奢な羽飾りのような長い睫毛に飾られた、きんと透き通った虹彩。 初夏の日のように明るく輝くその目を伏せて、ふと思案にふける様子をすると、 あなたの涼やかな目は濃厚な衝動を伴って切れ長の目じりにけぶるのです。
屈託無く笑う平素のあなたと違い、酷く危なげで蠱惑的なのです。
勿論あなたには何も見当たらぬことでしょう。
白い額を俯かせて案じなさることだって、あなたのことですから、 きっと明朗で素朴なことだと察するに難くない。
時に粗野とさえ囁かれるその御言葉、御行為、どれもあなたの天衣無縫の表れであると、 あなたを知るものなら皆承知のことでしょう。
旭将軍の名を冠せらた其の通り、あなたの美しさはまさに旭のそれに似ております。 明朗な美しさです。しかし払暁の気配を孕んだ仄暗いあの空は、黄昏の官能を含んではいますまいか。

饒舌過ぎて誰おまな件



俺をとられたくないんじゃなくて、むしろ俺にあいつをとられたくないんじゃないのか
可愛い妹だからというのは、余りにお粗末かな
とられたくないというのに語弊があるなら、そうだな、あいつはお前の片割れなんだ。 だから俺に恋愛なんてさせられないんだ。お前は忠義者だからな
だがお前が出来ない事を肩代りするのも片割れの役目なんじゃないか。 それとも、お前がその忠義の鎧をひっぺがして俺の元に来るなら、俺はそれでも構わないんだ。
ただ忘れるなよ。お前と俺とあいつ、三人は常に内向きに互いを見てるってことを

義仲・兼平・巴の3P三つ巴もえ




「なんだ、本当に女にでも見えたか」
「まさか。その様な御姿であっても貴方は立派な男児でございます」
「そうか(笑って)それなら中々愉快な姿だろう」
「貴方が仰るなら、そのとおり滑稽かもしれません。でも貴方の滑稽は私には美しく思われます」
「似合いもしない臭い台詞吐いたもんだな。俺を口説こうっていうなら、そんなもんじゃ話にならんぞ」
「分かっております。貴方がお好きなのはこうでしょう。 君が名に恥じぬ我が武勇をもって、その誇り高き戦姿を輝かしく飾りましょう、と」
「同じ陳腐なら、そっちの方がずっといい
(手をさし伸ばして)お前だって、こんな女の真似なんかより、具足や兜の方がいいんだろう」
「ええ、私の麗しい御大将。御簾の影で儚くけぶる化粧や色とりどりの着物より、 馬上に照り映える打物や錦の直垂の方がどれだけ美しくあられましょうか。」

とのが女装→結局マッチョ思考



弓取は最後が肝要でございます。 貴方の名が最後の最後で汚されるようなことがあっては、あまりに無念でならないのです。

それがお前の俺への思いだとしたら、どういうつもりでそれを言う。 忠義か、意地か、思込みか、お前の満足か。 情や愛かもしれないし、困ったことに、どれも当てはまってしまう気がする。 俺の為なのかお前の為なのか、それとももっと別のものの為なのかさえ。 俺にはお前が分からない。何通りもお前がいて口を揃えて俺の前に並んでいる。

そのどれも私であり且つ私でないかもしれない。 分かることはたったこれだけ、私は貴方の元で戦い、貴方の元で死んでゆく。 それだけしか確かなものはないのです。ですがそれで十分では御座いませんか。

それなら俺も、お前の言葉に背を推されるだけだ。後は好きにすればいい。 幾通りの俺が勝手に演じてくれるだろうさ。それにしても惨めだな。せめて惨めじゃなかった証を

私が居ります。皆も。巴も。例え世間が貴方を笑い或いは泣き弄んで忘れ去っても、 貴方を惨めにはさせません。独りにはさせませんとも。 どれだけ舞台を変えても貴方の傍に立ち続けるでしょう。貴方はただ、貴方の役割を。

全うしろと言うんだろう。後に続く俺の為の華々しい初公演。 後に続くどんな名舞台も始めが無ければ作れやしない。無数の脚本や演出が思い思いになぞった上を、 その度に幾通りもの俺とお前が、同じ最後へ並んで走ってゆくだろう。 どうだ、記念すべき初舞台、俺の姿はどう映る?

とても美しくあられます。後からやってくるどの貴方よりも美しく立派でございましょう。

それで十分だ。じゃあな、兼平。さようなら。

さようなら、義仲様。

木曽の最後



その他

黄泉にゆけない亡者達の
曲馬団は宵の合間を当て無く彷徨う
生首剣呑み血達磨針鼠
恨めしげに供する馬達の行列
見世物として彷徨い続ける
晒し刑の大行進

死出の旅路で人買に攫われ
サーカスに売られてしまった
愛しい愛しいあの人は
付き従う道連れの前では
それはもう立派に
サーカスの千両役者
輝かんばかりに美しかったけど
古ぼけた天幕の陰で
はらはら泣く
その昔人の上に立つ姿は堂々と然るべき
颯爽たる様で数多の家来を統べていた
けれど今は悲しき見世物の役者
立つは汚れし紛い物の舞台で
見上げる数多の意地悪い観衆
玩具のように着飾られ
卑下た団長に犯され
それでもあの人は美しかった
天幕小屋の舞台の上で
野次が飛び蔑み笑い
卑しくさざめくと思えば無言がひやりと覆う
そのくせ遠いところでじっとしている
冷酷な観客席をじっと見据えて
堂々と颯爽と立っているあの人
昔太陽と敬されたその姿と違わず
それは気高く美しく
舞台袖で家来達
あの昔の紛れも無い立派な誉れを見
舞台の愛しい偶像を崇めては
踏みにじられ汚され犯され
それでも美しいまま見世物の舞台に立っている
その背に心うたれ虜のまま
泣かず狂わず
我が身も見世物として
昔の様にその背に従う

(これが罰とでもいうのか
余りにも惨めな見世物の身
安息の地も無く
夜霧の内を永久に彷徨わされる
恥ずかしきこの姿を
好奇と悪意の下衆に晒し続け
浅ましき笑いを浴びせられる
でも我らが主を見たまえ
遠くから近くから
いいえ直接汚れた手で
散々弄ばれ辱められて
それでもたった一人針の地獄の舞台で
堂々と微笑みさえしてみせる
一番辛く惨めなのは
誰より気高きかのお方でしょうに
あの方を冷酷な目から庇うことさえ出来ない
情けない我らには
さしずめ道化が似合う筈
お供致しましょう
気高く美しいあなたを
道化になどはさせません)

不幸は見世物、蜜の味!
さあさ皆様ごろうじろ!
修羅の巷のサァカス地獄!




格闘映画や漫画の肉体なんて、観念そのものだ。 力や思想や情念の具現するところで、物理的で生物的な、外的な存在など見向きもされない。 戦いの傷や死は力や思想の傷や死で、「意味を持たない」死はないと言える程だ。
それどころか死自体が戦い手や参加者達に一方的にコントロールされている。 死は能動的であり敗北の一つの形でしかない。
生命のくびきから解かれた肉体、肉体そのものが魂の無限を盲信した魂であるという矛盾。 肉体を誇示しながら肉体を感じさせないという、観念の肉は際限がない。 段々訳が分からなくなるのは当然なんだ。あれは拳の語らいじゃなくて、必死の言葉遊びなんだから。

じゃあ、僕らの死はどうなるの?
意味なんて無いさ。観念じゃあないんだから。
じゃ肉体はあるの?
無いね。とっくに消失した。
じゃあ何?
なんだろう。
分からないや。
観念を持たない死、肉体を持たない死。紙の上の乾いた墨の死。それは一体何だろう。
だから何度も炭素や色素を塗り付けてみるのさ。そしてぐちゃぐちゃ。結局遊んでるだけなんだ。
遊ばれてるだけなんだよ。
同じことさ。それで結局、僕ら一体何だと思う?














 
童話清水物語

「義高様、遠路はるばるお疲れではございませんか?その様子だと流石、若いとはよきことですな。」
「むしろ退屈なくらいだよ。皆まだばたばたしてて、僕の出番ではないようだから。」
「それなら今暫くお寛ぎなされ。この辺りの景色は如何ですかな。」
「うん。故郷とは違うけど美しい所だね。緑が軽やかで瑞々しい。 木曽の深く重たい山の色とはまた違う。…小太郎は何してる?」
「外の者と共に貴方の屋敷住まいの準備をしているところでしょう。 必要とあらばお呼び致しましょうか?」
「いいや、その必要はないよ。ただちょっと聞いただけなんだ。 じゃあ僕は皆の前で恥掻くことないように、暫く休むよ。必要になったら呼んで頂戴」
家来、軽く一礼して去る。
義高、暫く縁で足を揺ら揺ら動かしていたが、いよいよ持て余して庭先に出る。 荒っぽいが生き生きと茂った狭い林がある。義高、その庭のミニチュアのような林に近づく。

「向こうは畑だろうか?林じゃなくて、ここの庭園なんだな。 こんなんじゃ広い遊び場は作れそうにない… でももう木曽に居たときみたいに駆け回ったりなんて出来ないから、これでいいのかもしれない。 それどころか今の僕には中々お誂え向きの箱庭だろうな。玩具の大将のお通りだ。」
義高、浅い林の中を掻き分ける。さっきまでなかったはずの玩具の木馬が表れる。 サーカスの美しい装飾を施した小さな馬である。 向こうが微かに見えていたはずの林が、いつの間にか暗く奥深くなっている。

義高ちゃんは子供だけが遊べる不思議な遊園地を知っている
林や森の奥に観覧車やメリーゴーランドなんかがあるみたいなんだけど、 大人が見に来てもどこにもない。異次元空間みたいな
身体が弱くて遊びに行けない大姫に、その不思議な遊園地をあげることにする。


僕が作ったんだ
義高様が?
うん。父上が、もう元服したんだから捨てなさいっていうんだけどね。 でも目を盗んで遊ぶんだ。でも、そうだ。ここの皆、大姫ちゃんにあげるよ
本当?これ全部?嘘でしょう?
嘘なんかついてどうするの。きっとこれはこの日の為に、大姫ちゃんの為に作ったものだったんだ。 じゃなくちゃあ、こんな可愛らしい木馬を走らせたりはしないもの。 弓取りの馬はもっと立派で逞しくなくっちゃね。
嬉しいわ。嬉しいわ、義高さま。この綺麗なお馬、皆私のなのね。とっても素敵だわ!

姿を隠したり不思議なことを言う子供達を不気味に思い、 義高ちゃんに得体の知れない脅威を感じるようになる頼朝様。
義高ちゃんがいなくなってからも、大姫は時折姿を消す。
年頃になってもぼろぼろになった遊園地で遊び続ける大姫



見てこの乗り物素敵なのよ。こうやって前に後ろに揺られてちっとも動けないの。 でもお空がとっても近くなるのよ。ブランコっていうんですって。 義高様がいなくなって少しづつ壊れてしまって、私、直せないからみんなボロボロになってしまったけれど
お父様は不思議ね。いつもどうしてここが分かるの?お母様はずっと探し当てられずにいるのに

こんな何もないところで一人何をしているんだ。ずっと遊んでいたのか。もうとっくに大人だというのに

どうして?皺くちゃのお婆ちゃんになったって、私、遊ぶわ。私だけ大人になってしまったら義高さまが可哀相。 私、義高さまとずっと一緒にいたいの。だから釣合わなくなってしまうなんて、嫌だわ

私が悪かったんだ。許してくれとは言わない。だがもうここにいてはいけない!

姿を消した娘を追って戻ると座敷で娘が危篤になっている
うなされて横たわる大姫



「みんなごめんなさい。でも私みんな許せない。私遊び場に行くわ。ここには戻らない。義高様と一緒に。ほら義高様も来てくれた」
外でそれを聞いてたまらず叫ぶ幸氏
「どうかお願いです義高様!姫様を連れてゆかないで下さい!」
顔のない子供が覗く

あれから声を聞くこともない
時折草陰にみえるのだ、壊れ朽ちた回転木馬が
きっと遠くへ行ったきりなのだ




大人になることを拒否された義高
大人になることを拒否した大姫
幻の2人は廃墟になった遊園地を散歩する
ぼろぼろのメリーゴーランド
そっと馬車に腰掛ける
錆に固められた動力機械
震えるように軋んだまま動けない馬と馬車

「まあ見て。こんなところにお花。綺麗ね」
「ごめんね、大姫」
「どうして謝るの」
「ほんとはね、これ、君が一人で退屈しないように残したんじゃなかったんだ」

ほんの束の間錆から逃れて回りだそうとするメリーゴーランド
痙攣したように大きく揺れる馬車
身を寄せ合って庇う

「駄目だよ。ここはきっと、危ない」
「どうして?義高さまがいるから平気」
「どうしても駄目だよ。さあ行こう」

手を繋いで歩き出す子供達

「どこへ行こう?」
「私、義高さまの生まれたお山へ行きたい」
「じゃあおいで。連れてってあげる」

2人手を繋いで駆けてゆく
行く先に懐かしい館
赤ちゃんを囲う大人たち
そのうちから一人外へ出てゆく

「まあ、あの人、義高さまにそっくり」
「あれが僕の父上だよ」

庭先の人影に気付く若い義仲
並んでお辞儀する亡霊の2人

「        」

父は何か言いかけようとする
でも2人には聞こえないまま
風の中高く駆けてゆく2人

「遠くに行ってみようか、大姫。ずっとずっと遠いところに、もっと綺麗な遊園地があるかもしれないから」
「ええ、行きましょう、義高さま。一緒なら私、どこまででも行けるわ」




トマトケチャップ皇帝義高ちゃん
大人に殺される運命を知った子供達の反逆
己が生きるために大人を追い出したい義高ちゃんと
大人が恋しいのに憎くて憎くて仕方がなくて引き裂かれそうな大姫
死んだ子供とサーカスのテントで大人たちを虐殺・弾圧していく
大人狩りが始まる
親を庇う子供は密告を受ける。泣く母親を追い立てる
安徳帝を連れ去って子供軍の帝に立てようとする
子守唄運動で抵抗する政子達母親
ただ唯一娘への愛が消しきれないばかりに、普段の冷徹なまでの判断がし切れず苦境にいるすけどの
どうして鎌倉軍を追い立てる軍を立てられたか情報が伝わらず、 恐怖の余り子供狩りがおこなわれる都
父親を倒さなくてはならないと本能的に感じているのはともかく、 美しい父親を跪かせ蹂躙したいナチュラルどS義高
大人でありながら参謀に付き従うのは社会転覆に賛同するあの覚明殿

元ネタは寺山修司



転生・現代パロ

僕は誰も怨んでなんかいませんよ。父上もあなたも頼朝様も。
皆それぞれ考えうる判断を下したまでじゃございませんか。勿論この僕だってそう。 ただ皆の思ったことが一致しなかった、それだけでしょう。

あなたは佐殿に似てらっしゃるってずっと思ってましたわ。穿った冷めた口振りなんて、 全く実の親子のようなのですから。
でも少し違うようだわ。そんな突き放した物言いするのに、 あなた人を嫌いじゃないのね。失望しないでそれで構わないと思ってらっしゃる。 きっと皆に大切に大切に愛されたんでしょう。

そうなのかもしれません。思えば父も皆も、僕のことをとても可愛がって下さいました。 生意気な口をきくのに誰もが笑って受け止めてくださった。
父は天真爛漫な方で、愛情深く、素直で人を疑うことを知りません。 それはもう余りに可憐で、息子の身にですら危なげに見える程に。
僕がその父の子なら、僕にも同じ血は流れているのでしょう。

血をどうこうとおっしゃるなら佐殿も父君も同じ血が流れていましょう。 血などに実質はございませんわ。血と情は別に在るものです。 あなたの父君が愛情深いなら、それは血の繋がらぬ他人に愛されてきたからではございませんか。
そう思えば佐殿は気の毒なのです。詮索と無関係が針の筵みたいに取り囲んで、 信じる人も得ない侭御立派になられましたが、あの方は未だに寄辺なく独り佇んでらっしゃる。
まぁ、私ばかなことを。こんなことを、こんな風に話してしまうなんて。

でも、あなたのおっしゃること、分かる気はするんです。頼朝様を見てますと、 ふと子供のような姿が見えるのです。父が無邪気な子供のようだとして、頼朝様は大人びた、 でも寂しい子供です。甘えようにも甘え方を知らない。 表情を消してぼんやり世の中をご覧なってる。
でも頼朝様だって、頼る先を見つけられのではないでしょうか。 あなたと話す時は、自然柔らかいお顔してらっしゃいます。

政子さんと義高ちゃん



「一緒に心中しましょうよ。お互いの手と首をリボンで結んで身投げするの。 水に浮かんだ私達、きっと綺麗よ。 きらきら底まで透ける水面で自重を投げ出して、 伸びやかに髪を散らして漂う私達の肉体の周りを、泡や波紋が無限に曼荼羅を描くでしょう。 清らかな宗教画みたいに。永遠の美しさの中で私たちは2人きりよ。 でもそれもほんの束の間の美しさなのね。直ぐに膨れて醜くなって、誰もが目を逸らすようになるわ。 父はそんな私達を見たらどう思うかしら」
「残酷なことを考えるね」
「父が残酷なことをなさったからよ。 あの時私、こんな惨たらしい世界なんて全部壊れてしまえばいいと何度も何度も呪ったし、 時折私自身の手でめちゃめちゃに滅ぼす様を思い描いたわ。 でも、実際自分ひとりなんて哀しいほど無力で、それに本当に壊してしまっても、何にもならないの。 だからこれが、私にできて私に必要な復讐方法なのよ。 でも、あなたには関係ないことかしら。木曽の叔父様はきっと良い人だろうから」
「でも、良い人だから、愛してるからこそ、復讐してみたい気もする。 無邪気で可憐で愚かな父上。きっと僕のことを信じて疑わないだろうに、 僕が自ら死んだと聞いたらどうなるだろう。裏切りと思って怒り狂うだろうか。 泣いて気でも触れてくださるだろうか。 でもきっと父は強い人で、周りの人たちもきっと支えてくれるだろう。 父は僕の死をどう受け止めてくださるかな。素朴な人だから、案外単純なものかもしれない。 つまらないな。」

「嫌になったの?それとも怖くなってしまった?」
「そうやって挑発するもんじゃないよ。死ぬなんて今更怖くないさ。 だけど大姫、確かにここで僕らが死ねば、父達に何か思い知らせることができるかもしれない。 それはそれで小気味いい。 でも、自分の人生はいいの?何も無しのまま、また土に返るの?」
「だって、生きてゆくって頼りないわ。 もしこのまま2人で死ねたら、幻滅したり嫌いになったりしないで、 これからもお互い仲良しのままずっといることができるでしょう。」
「もう遅いさ。だってもう子供じゃないんだから。 大人をただ大人だからって憎むこともできないし、 美しい夢想の方がどれだけ頼りないかも知ってしまったし、現に今、 僕らお互い幻滅しあってるじゃないか。」
「…じゃあ、尚更だわ。私、貴方と離れ離れになんてなりたくないのに。」
「僕だってそうだよ。幻滅することがお終いじゃない。そうでしょう? 変な望みを抱えてゆくのではなく、憑き物を落とすように 失望する程かえって穏やかになってゆける気がするんだ。少なくとも僕はそう信じてる。 僕は君と2人で世の中を眺め直してみたい。誰の目でもない自分達の目で。 もう誰にも邪魔されないんだから、 昔のように子供のままじゃなくて一から新しくやっていきたいんだ。」
「私だってそうよ。ええ、もう誰にも邪魔なんてさせないわ。 行きましょう、ゆけるところまで何処へだって。もう今更恐いものなんてありはしないの。 そして振り返ったときに、あの頃の、 子供のまま閉じ込められた私達のことも優しく抱き止められるように。」

「おう、お帰り。楽しかったか?」
「…父上は呑気だね。」
「あ?何かあったのか、ケンカでもしたのか?」
「なんでもないよ。楽しかったよ。とても。」

女学生大姫ちゃんと大学生義高ちゃん




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